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happyworld

2017年09月18日

らぬおおぶりの


イブ滅亡千年を祝う饗宴は想像を絶する豪華なものだった。ムナールの地では十年前から噂され、いよいよその日が近づくと、トゥラー、イラーネク、カダテロンはもとより、ムナールの全都市やその彼方の地から、馬や駱駝や象に乗って人びとが到来した。当日の夜には、大理石の城壁のまえに、貴顕の仮設建物や旅人の天幕がならび、湖畔一帯に浮かれ騒ぐ者たちの歌が響きわたった。宴会の広間では、王ナルギス=ヘイが征服地ナスの窖《あなぐら》からもたらされた古酒をきこしめして横たわり、祝宴にあずかる貴族やせわしく働く奴隷に取り巻かれていた。その饗宴では数多くの異国の珍味が食され、中海のナリエル諸島の孔雀、イムプランの遙かな丘陵の仔山羊、ブナジク砂漠の駱駝の踵《かかと》、キュダトリアの林の堅果や香辛料、ムタルの波に洗われた真珠をトゥラーの酢に溶かしたものがあった。饗宴にあずかる者すべての味覚にあわせ、ムナールきっての料理人たちが用意した調味料は数えきれないほどだった。しかしこれら美食のなかで最も珍重されたのは、湖で獲れた大魚であり、いずれ劣魚が、紅玉と金剛石を鏤《ちりば》めた黄金の大皿に載せて出された。
 王や貴族が宮殿内で饗宴を楽しみ、黄金の大皿を飾る魚料理をながめていたころ、他の者たちもそれぞれの場所で饗宴にあずかっていた。大神殿の塔では、神官たちが祝宴をし、城壁外の仮設建物では近隣都市の貴顕たちが楽しんでいた。そして凸状に膨らむ月からいくつもの影が湖にくだり、忌《いま》わしい緑の霧が湖から湧きあがって月にまで達し、命運つきたサルナスの塔や円蓋が、不気味な霧に包みこまれるのを最初に目にしたのは、大神官ナイ=カーであった。その後、塔にいた者や城壁の外にいた者は、湖水の上に奇怪な光を目にし、岸辺近くに高くそそりたつ灰色の岩アクリオンがほぼ水没しているのを見た。漠々とした恐怖が速やかにつのりゆくまま、イラーネクや遙かなロコルの貴顕たちは、仮設建物や天幕をたたませ、アイ河目指して出立したが、サルナスをひきあげる理由とて定かではなかった。
 やがて真夜中の刻限が近づいたころ、サルナスの青銅の城門のすべてがにわかに開き、狂乱した群衆がどっと繰り出して平原を黒ずませたので、サルナスを訪れていた貴顕や旅人も仰天してひとりのこらず逃げ出した。この群衆はことごとくその顔に、堪えがたい恐怖から生まれた狂気をまざまざとあらわし、聞き手が証を問えないほどの恐ろしい言葉を口走ったからである。恐怖のあまり半狂乱の目をした者たちが、王の宴会の広間で目にした光景を金切り声で叫びたてた。窓からのぞいてみれば、もはやナルギス=ヘイ王や貴族や奴隷の姿はなく、膨れあがった目、突き出した締まりのない唇、奇妙な形の耳をした、いいようもない緑色のものが、恐ろしげに跳ねまわり、妙な炎をはらむ紅玉と金剛石の鏤められた黄金の大皿を前脚でつかんでいたという。そして馬や駱駝や象に乗って、命運のつきた都サルナスから遁走した貴顕や旅人が、霧の立ち昇る湖をふりかえってみれば、灰色の岩アクリオンは完全に水中に没していた。
 ムナール全土とその隣接地すべてにわたって、サルナスから逃げ出した者たちの話が広まり、隊商がいくつも呪われた都とその貴金属を探したが、ついに見つからなかった。旅人がそこへ足を伸ばしたのは長い月日がたってからのことだが、そのときでさえ、あえて旅をおこなったのは、勇気と冒険心を備えた遙かなファロナの若者だけだった。ムナールの民とは縁もゆかりもない、黄色い髪と青い目をもつ雄々しい若者たちであった。事実、彼らはサルナスを目にするために湖まで行ったが、静穏に包まれた広大な湖そのものと、岸辺近くに高くそそりたつ灰色の岩アクリオンを見いだしたものの、世界の驚異であり、人類すべての誇りとするもので


Posted by happyworld at 11:56│Comments(0)
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