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happyworld

2017年08月30日

むことはでき


宝庫のような魔的な伝承の知識がきれぎれにひらめいては消えていった。狂えるアラブ人アブドゥル・アルハザードの書き記した章句、ダマスキウスの悪夢めいた外典の一節、ゴーティエ・ド・メッツの狂乱した『世界の実相』の忌《いま》わしい文章等々。わたしは狂おしい章句を復誦し、アフガニスタンのオクサス川を悪鬼どもと漂ったアフラシアブのことをつぶやいた。そのあと、ダンセイニ卿の物語の一節――「光を照りかえすこともない深淵の暗黒」――を何度となく唱えた。勾配が驚くほど急になったときには、恐ろしさのあまり唱えられなくなるまで、トマス・ムーアの詩の一節を歌うように繰返し口にした視光師
 
[#ここから2字下げ]
蝕にあう月の薬種にみたされて
霊薬抽出されん魔女の大釜のごと、
黝《かぐろ》なる闇にひそみし溜池なり。
かの水淵に足を踏みいれ、進みえるやをうかがわんとて
跼《せぐくま》らば、われは見たり、
視界のとどくかぎりまで、
破璃《はり》のごと、なめらかなる漆黒の縁を。
死神の所領より軟泥の岸にまで広がりたる
黯黒《あんこく》の瀝青《れきせい》もて、塗りあげられたるばかりかと思われけり。
[#ここで字下げ終わり魚肝油 維他命
 
 足もとにまた平坦な地面を感じたとき、わたしにとって時間はもはや存在していなかった。いまや遙かな頭上に位置するあの二つの神殿の内部より、やや天井の高い場所にわたしはいるのだった。直立することはできなかったにせよ、膝をついて進、わたしはうずくまって、足をひきずりながら、でたらめにあちこちを這いまわった。ほどなく、いまいる場所が、上面ガラスばりの木製の箱が両側に立ちならぶ、狭い通路であることがわかった。このような古生代の地底で、磨きぬかれた木とガラスの感触を得たわたしは、それが意味するものを考え、総身《そうみ》に鳥肌がたつ思いがした。箱は通路の両側に規則正しい間隔をおいてならんでいるらしく、長辺を壁に平行にしていて、形といい大きさといい、忌わしいほど棺桶に似ていた。さらに詳しく調べるため、二、三の箱を動かしてみようとした結果、しっかりと固定されていることがわかった。
 その通路が長いものであると見当をつけたわたしは、もがきながら急いで這い進んだ。あの真暗《まやみ》のなかにわたしをながめる目があったなら、いかにも恐ろしげな姿に見えたことだろう。這い進むうち、ときとして左や右にそれ、体があたることによって壁と箱の列がなおもつづいていることがわかった。人は心の目に思いうかべながら考えることに慣れている。わたしは闇のなかにいることをほとんど忘れはて、あたかも実際に目にしているかのように、木とガラスで造られた箱が単調にならぶ、天井の低い、果しない通路を思い描いていた。しかしやがて、いいようもない感情のうねりのうちに、わたしは実際に目にしたのだ修身
 思い描く情景がいつ現実の光景に転じたのかは、わたしにはわからない。前


Posted by happyworld at 12:08│Comments(0)
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