2017年01月11日

は言語を絶した


全世界にテレパシー現象を起こし、高名な建築家が狂死し、哀れなウィルコックス青年が高熱に浮かされた。偶像が写し出していた太古の神、暗黒の星が劉芷欣醫生 産んだ緑色の怪物、いまやそれが目覚めて、おのれの権利を主張している。星辰がふたたび、正しい位置に戻ったのであろうか。太古以来、その信徒が幾度となく試みては失敗に終わっていた悲願が、何も知らぬ船員たちの手で成し遂げられたのだ。邪教徒たちの偉大な神クトゥルフが、数千兆年ののちに解放されて、いま、餌食を貪《むさぼ》り始めている……
逃げだそうとしたときはすでに遅く、船員の三名は軟質ながら巨大dermes 脫毛な爪に打ち潰された。神よ、彼らに安らぎを与えたまえ。この宇宙にも安らぎがあればであるが。この三人はドノヴァンとゲレラとアングストロームで、あとの三人は狂ったように、果てしなくつづくかと思われる岩山を乗り越えつつ、ボートを目指して走りに走ったが、途中で三人とも姿を消してしまった。ヨハンセンが目撃したのは、パーカーの最期の場面だけで、その死の様子が、目の狂いでないとの断《ことわ》り書つきで記載してあった。パーカーは石造物の角を曲がるとき、足をすべらして倒れた。鋭角に見えていたところが、急に鈍角に変わったからで、そのとたんに、彼の身体は石のなかに呑みこまれていった。かくして、ヨハンセンとブライドゥンの二人だけがボートにたどりつき、必死のおもいでアラート号へ漕ぎ戻った。その間、山とも見える巨体の怪物は、ぬるぬるした岩を踏んで海ぎわまで達したが、そこでやや躊《ためら》っていた。
全員が上陸して、留守にしていたにもかかわらず、アラート号の蒸気は冷えきっていなかった。二人が無我夢中で、操舵室と機関室のあいだを駆けまわると、エンジンが動きだし、船恐怖の下におかれながらも、徐々に死の海を進行し始めた。岸辺では死人を呑みこむ奇怪な石造物の上で、暗黒の星から渡来した邪教の神が、逃れ行くオデュッセウスの船に呪いの声を吐きつけるポリュペーモスさながらに、口から泡をとばして何やらわめき立てていた。しかもこのクトゥルフは、伝説に残るこの一眼巨人キュクロプス族以上にしぶとくて、たちまちそのぬらぬらした巨体を海中に滑りこませ、宇宙的な力で波を引き裂き、凄まじい勢いで追跡してきた。振り返ってそれを見たブライドゥンは、その瞬間に気が狂った。そしてその後は、思い出したように笑い声をあげる状態がつづき、ある夜、これも同様に半狂乱のヨハンセンが甲板上をうろうろしているあいだに、船室内で死んでいった。
だが、ヨハンセンは屈しなかった。アラート号のエンジンが全能力を発揮せぬうちに、怪物に追いつかれるのが必然的とみたので、一かばちかの冒険に運命を賭ける決大學網絡意をした。エンジンをフル・スピードにしておいて、電光のような素早さで甲板上を駆けぬけると、舵輪をいきなり逆回転させた。悪臭を放つ水面に渦が生じ、



Posted by happyworld at 11:45│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
は言語を絶した
    コメント(0)